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■“群島諸国大戦”と“海神の烙印”■
“群島諸国大戦”勃発直前、ヒロの養父が頭目を務めた海賊船団がオーシア帝国艦隊に強襲される事件が起こる。
その強襲によって頭目を含む多くの海賊衆が命を落とし、新たな頭目となったヒロは近隣海域の海賊たちを率いて、弔い合戦として手始めにオーシア帝国巡視船団を襲いました。
オーシア帝国巡視船団の総指揮を任されていたのが、“海神の烙印”の原初の宿主であったオーシア帝国第一皇女のユラ・オーシアであり、かつてヒロが懇意にしていた少女――。
この予期せぬ再会でヒロの運命は一変し、“呪い持ち”という人々に忌み嫌われる存在に身を窶すことになります。
“海神の烙印”は「宿主の痛みと苦しみを糧にする」と言われているように、宿主であるヒロを肉体的にも精神的にも苦しめて疲弊させていきますが、多くの人々に支えられ頼られ、持ち前の責任感の強さも手伝って“呪いの烙印”を武器としてオーシア帝国に立ち向かう同盟軍の長を務めました。
そうした中でヒロが思うのは、“群島諸国大戦”という戦争を引き起こすきっかけになってしまった自責の念。自らの命令の下で懇意にしていた者たちが命を落としていくことへの疚しさでした。
――「僕が起こした戦争の名残を、そのままにしておくわけにはいかないからね」
これは物語中でヒロが口にした言葉ですが、ヒロは“群島諸国大戦”終結後は同盟軍軍主だった事実を隠しながら、戦争の残りカスともいえる数多の諍いに身を投じ、自らが傷付き苦しむことで責任を取り、謝罪の意とするような行動をしてきています。
■ヒロと“海神”と“海神の烙印”■
【呪いの烙印シリーズ・短編集】のヒロの章「人魚と海色の瞳の少年」で、幼い頃にヒロは“海神の烙印”の元となった魔族、“海神”に出逢っていた逸話が語られました。
そして、両親が流行り病で死んだ後に孤児として放浪していたヒロは、“海神”の導きで訪れた海賊船団に拾われます。
“海神の烙印”が恐ろしいものだと思いつつ、すぐに呪いから逃げようとしなかったのには、ヒロなりの“海神”の魔族に対しての感謝の気持ちがあったのだと思われます。
■鞘に巻き付けた想い■
【片翼の鳥~出会いと別れの物語~】の第二幕ニライ・カナイ編の終わりに、ヒロはビアンカからお守りとして赤い扶桑花(ハイビスカス)の刺繍が施された布を貰っています。
東の大陸には「戦地へ赴く戦士・騎士の無事と帰還を願うために、待つ身である女性は普段身に着けているものや作った物をお守りとして託す」という風習があり、死を望んでいたヒロを憂いてビアンカが作ろうと決めました。
手渡す頃にはヒロの“死への羨望”は払拭されてしまいましたが、「無茶な戦い方をして汚したり無くしたりしたら許さない」という、遠回しの無理はしないでという想いが籠められています。
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