4人が本棚に入れています
本棚に追加
涼香の声に被さるように発せられる理華の声。
「あー、ごめん。ちょっと色々やってて……どうしたの?」
すぐ出たつもりだったが、もしかしたら何度も着信があったのをマナーモードにしていたために気づかなかったかもしれないので言葉を濁しつつ答える。
『聞いてよ聞いてよ! 緊急事態! 彼氏が浮気してたのよ、知樹が。ほら、すずも会ったことあるでしょ?』
知樹。
誰だっけ、と思って脳内の記憶を巡らせ、数秒後に思い出した。
幸田知樹。
大学入学前ぐらいに理華が彼氏ができたのー! と紹介してくれたイケメン君だ。
そういえばその時一緒に居たイケメン君といいカップルになれそうな顔だったなーと思い出しながら「ああ、あの人か。てか、浮気? ……まぁあの顔だったら引く手数多っぽいもんなぁ……」と呟いた。
『そう! あの顔マジでどんぴしゃ好みでさー……じゃなくて! ちがくて! とにかく今から問い詰めるんだけど1人じゃ嫌だから来て!』
「え……まさか、修羅場に付き添えと?」
『向こうも健君連れてくるから私もすずに来て欲しいの!』
「たける?」
『1回会ったでしょ!』
顔をしかめながら再び記憶を掘り起こす。
「あ、……ああ!」
お似合いと思ったイケメン君だ、と思い出す。
米村健。
確か、そんな名前だったと優秀な記憶力を持つ脳が思い出してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!