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初めて前を見て歩く景色は、いろんな色にそまって、きれいで、だけど少しさびしかった。
空が橙色でぬりつぶされると、直子の唇のような赤が時間をかけてかける。
「きれいね」
ぼそ、と直子がつぶやくと何だかこの景色が、特別のように感じた。
だけど徐々に青色、藍色、そして黒色に変化していくと、今いる直子までも消えてしまいそうな気がした。
「私は、どこにも行かないわよ。だから、そんなに強く握らないで頂戴」
さっきよりも強くにぎっていることを知り、反射的に力をゆるめる。だけど直子は、ゆるめた手をはなさずしっかりとにぎる。
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