1 弱さ

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「凛乃!こっちこっち」 賑やかな南国風居酒屋の店内をメッセージ通りに進むと、奥の個室から希美がひょこっと顔を出して待っていてくれた。 ボリュームのある茶髪のお団子スタイルは彼女のトレードマーク。 今は歯科衛生士として歯医者に勤めている希美は、とにかく明るくて、男女関係なく人との距離を縮めるのが上手な子。 その笑顔が見えた瞬間嬉しくて、私は手を振りながら早足で近寄った。 「誘ってくれてありがとう」 「へへー。私こそ突然だったのに来てくれて嬉しいよー」 希美の頬はポッとピンク色。ほろ酔い、かな? 可愛いなと思いながら靴を脱ぎ、座敷の個室に入った。 お邪魔しますと顔を上げて、希美の向かいに座っている男性と目が合った瞬間──。 「あっ……」 ドックン。 心臓が口から出そうになった。 希美はそんな私を知ってか知らずか、 「私の隣りにどうぞー!」 素敵な笑顔です。 「う、うん、ありがとう」 私の顔、引き攣ってなかったかな。 そこに居たのは、私もよく知る桐沢桃也(きりさわとうや)だった。 切れ長の二重と、スラッと形の綺麗な鼻に、暗めのアッシュ色の髪。 誰から見ても美形だろうその容姿は、俳優さんかモデルさんのようで、人目を引く。 桃也くんは、二つ年上で、元バイト仲間で、圭の親友──。
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