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「凛乃!こっちこっち」
賑やかな南国風居酒屋の店内をメッセージ通りに進むと、奥の個室から希美がひょこっと顔を出して待っていてくれた。
ボリュームのある茶髪のお団子スタイルは彼女のトレードマーク。
今は歯科衛生士として歯医者に勤めている希美は、とにかく明るくて、男女関係なく人との距離を縮めるのが上手な子。
その笑顔が見えた瞬間嬉しくて、私は手を振りながら早足で近寄った。
「誘ってくれてありがとう」
「へへー。私こそ突然だったのに来てくれて嬉しいよー」
希美の頬はポッとピンク色。ほろ酔い、かな? 可愛いなと思いながら靴を脱ぎ、座敷の個室に入った。
お邪魔しますと顔を上げて、希美の向かいに座っている男性と目が合った瞬間──。
「あっ……」
ドックン。
心臓が口から出そうになった。
希美はそんな私を知ってか知らずか、
「私の隣りにどうぞー!」
素敵な笑顔です。
「う、うん、ありがとう」
私の顔、引き攣ってなかったかな。
そこに居たのは、私もよく知る桐沢桃也だった。
切れ長の二重と、スラッと形の綺麗な鼻に、暗めのアッシュ色の髪。
誰から見ても美形だろうその容姿は、俳優さんかモデルさんのようで、人目を引く。
桃也くんは、二つ年上で、元バイト仲間で、圭の親友──。
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