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ひんやりした秋の夜風が、頬から髪を撫でていく。空を見上げると、薄く浮かぶ雲の間で半月がひっそりと輝いていた。
恭ちゃんのアパートから細い通りを抜けて、大通りに出れば駅までは一本道だ。
住宅地なので外灯が多く、車の通りもそれなりなので、1人で歩くのを怖く感じたことは無かった。
ふと希美からのLINEを思い出し、スマートフォンを取り出した。
[今から桜木駅で飲むよ! 凛乃も暇だったらおいで~]
明日は土曜保育の当番じゃないから、私は休日。
[今から行くね! お店教えて?]
と迷わず返信した。
華の金曜日。一人ぼっちは、寂しかった。
圭に遠慮して、交際中はなかなか飲み歩くことなんてなかった私だけど、今はすっかり友達からの誘いも増えている。
その分、圭のことを考える時間は少しずつ減ってきたのは、進歩だと思ってる。それでも、私の心の大半は、変わらず圭が占めている。
それでも、私は今まで圭に固執して狭い世界で生きてたのかもしれないということに、少しずつ気付き始めていた。
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