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そういえば……希美は桃也くんとも仲良しで、バイト中もよく冗談を言い合っていた。
「凛乃も頼んで頼んでっ」
希美が鼻歌を歌いながら差し出してくれたメニューにさらりと目を通し、私も二人と同じ生中を頼んだ。
テーブルには、半分ほど減った2人の生中と、焼き鳥などのおつまみが数品並んでいた。
「じゃあ改めまして。かんぱーい!」
ゴツッ、と重たいジョッキの音が鳴り、私はごくごくと、3分の1ほどいっきに飲んだ。
「キャー! 凛乃ってば、見た目によらず豪快ね」
「そうかな?」
希美、だいぶ出来上がってる。
言われて思い返せば、生中を美味しいって感じるようになったのは圭の影響だった……。
「凛乃、元気だったー? 前に会ったの7月だったね。もう9月なんて年越しちゃう、老けちゃう」
「ふふ、希美酔すぎてる? 夏以来だから久しぶりだね。元気にしてるよ」
「良かったあ。言わなかったけど、前に会った時は随分痩せちゃってて心配してたの。今は顔色もいいね!」
「そう……だったかな。あはは」
わざとらしい笑いを付け足してから、目の前にある枝豆に手を伸ばした。
「久しぶりだね、凛乃ちゃん」
視線は感じていたものの、なかなか合わせられずにいた。目の前の焼き鳥からそっと視線を上げていくと、爽やかに微笑みかけてくれている、桃也くん。
緊張していたはずなのに、その笑顔に思わずほっとした。
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