456人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
思い返せば、桃也くんはお通夜でも告別式でも、無責任な言葉は口にしなかった。
もしかすると、“かける言葉がなかった”というのが真の解釈なのかもしれない。
でも、悲しそうに微笑みながら私の目を見てゆっくりと1度頷いた、そんな姿が今になって鮮明に蘇る。
家族も恋人もいなくなって、この世界にたった1人になってしまった孤独感は、どんなに心許せる友達といても埋まることはなかったんだ。
本当は、毎日、1人の部屋に帰る時も、ベッドに入って眠る時も、朝出かける時でさえ、寂しくて寂しくてたまらなかった。
桃也くんが私の想いを受け止めてくれたことで、今になって、2人がもう戻らない悲しみが止めどなく押し寄せてくる。
桃也くんは、私が子供のように泣きじゃくる間、ずっと背中を摩っていてくれた─。
最初のコメントを投稿しよう!