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「じゃ、食べよっか。弁当」
「うん」
ここへ来る途中、桃也くん行きつけという近くの小さなお弁当屋さんで夕食を買った。
酷い顔の私は彼にお任せしたところ、幕の内弁当というなかなか渋い、けどいかにも栄養バランスの良いお弁当を買ってきてくれた。
奢るね、と言うと、「じゃあお言葉に甘えて」、と言ってお金を出させてくれて、なぜだか少しだけ救われた気持ちになった。
桃也くんの家は1LDKで、私が密かに憧れている対面式のキッチン。
そこに立つ桃也くんをリビングから見ると、なんだか不思議な感覚だ。
家族でもなければ、恋人でもないのだから。
「凛乃ちゃん、麦茶でいい? てか他がないんだ。ごめん」
「麦茶がいい、ありがとう」
「じゃ、これテーブルまでお願い」
私は渡されたお弁当の袋を持ち、ラグに座った。
そしてグラスを2つ持った桃也くんも座ったのを確認してから、いただきますと手を合わせて食べ始める。
「おいしいっ!」
「だよね? 店主が素材にも味にも拘ってて。メニューは少ないんだけど日替わりが上手いから俺ここ率高いんだ」
「優しい味で、私も好き」
「良かった、気に入ってくれて」
桃也くんの温かさ、お弁当の優しい味、こんな私を癒してくれるものって、案外身近に溢れてるものなんだ。
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