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1 弱さ
あれから半年。
季節は夏を過ぎて、秋になった。
「凛乃、今日このまま泊まってく?」
カーテンから漏れる月明かりが波模様を描くグレーのシーツの上で、日野恭介は私に言った。
黒くシンプルな壁掛時計に目をやると21時を回ったところ。
「恭ちゃん明日早いんでしょ?もう少ししたら帰るね」
身体を横に向けて体を丸め、ふうと息をつく。
「あーそうだった。じゃあそれまでゆっくりしててな」
彼は人懐こい笑顔でそう答えると、私にそっとキスをして布団をかけてくれた。
そして成し終えたゴミを捨て、シャワーへ向かう。
彼の優しいところが好き。
恭ちゃんは私の彼氏で、ひとつ年上の24歳。
職業は法務局員らしいけど、詳しいことは分からない。
……正しくは、話してくれたのかもしれないけれど、私の頭にはそれ以上の情報はインプットされなかった。
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