4 境界線

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「凛乃ちゃんの荷物、とりあえずこの辺でいい? 狭くて悪いけど、この一角好きにしていいよ」 あれから当面の荷物をまとめて桃也くんのマンションに来た。 と言っても、仕事のジャージとエプロン、下着、化粧品くらい。 自分を見てみれば今も私はジャージ姿だし、保育士が私服を着るのは休日くらいだ。 それにしても、突然来ても部屋は綺麗に整頓されていてさすがだなと思う。 桃也くんが私のボストンバックを置いたのは、寝室の窓際だった。 初めて入る寝室は、ベッドと本棚があるだけのシンプルな部屋。さらに藍色のカーテンが落ち着いた雰囲気を醸し出している。 本棚には、ベストセラーのバスケの青春漫画や、自動車についての私には一生縁がなさそうな本が並ぶ。 「私、ここに入ってよかったの?」 「さすがにリビングに女の子の荷物はないでしょ」 その言葉に、腫れぼったい目が引き攣るのを感じながら笑った。 「あはは、私のことは女の子扱いなんてしなくていいよ!友達だもん」 「うん、まあでも、“女の子の友達”だからね~」 桃也くんが寝室の窓を開けると、爽やかで気持ちのいい風が入り込んできた。
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