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「いきなり出かけたいなんて、どうしたんですか? 」
電車の中で揺られながら仁にそう聞かれた。通勤ラッシュ程ではないが少し電車の中は混んでいて私と仁は吊革に掴まって立っている。
「もうすぐ父の日でしょ? お父さんに何か買ってあげたいの。でも男物を売っているとこに女1人で入る勇気がなくて……」
「そうなんですか」
明後日は父の日だ。誕生日に仁を買ってくれたお礼もそうだが、日頃の感謝を伝えたい。
「今年は腕時計にしようと思うの。お父さんの腕時計ちょっと古いし」
「いいと思います」
……仁の返事がすごくテキトーだ。まぁロボットだから仕方ない。最近は割と話してくれるようになった方だ。
今日はお父さんのためにきちんとバイトもして貯金してきたから、いい時計を買ってあげたい。
『次は○○駅〜』
電車のアナウンスが私たちの降りる駅の名前を呼んだ。次で降りるよ、と仁に声をかけようとした時、車体が少し揺れた。
「きゃっ…」
なれない電車の揺れによろけて転けそうになると、前にいた仁がぎゅっと抱きとめてくれた。
「大丈夫ですか」
「!」
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