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「ここのソフトクリーム美味しいって友達が言ってたんだよねー」
「そうなんですか」
「仁は何食べる? 」
「いえ、私は別に大丈夫です」
仁の返事を聞いて、私は自分の発言を後悔する。仁はロボットだから味覚がない。一応ものを食べることができ、食べたものは体の中に溜める機能はあるが、あとからお腹の部分を解体して食べたものを出して洗わなければならないらしい。お父さんが面倒だからあまり食べさせないように、と言っていた。実際、一緒に食卓を囲んでも仁は何も食べず、話し相手にはなってくれるだけだ。
「あ、えと…ごめん」
「私はロボットなのでお気になさらず。日菜さんは何味を食べたいのですか? 」
「えっと…ほうじ茶、かな」
仁と一緒に食べられないのはいつもの事だけど、やっぱり少し悲しかった。
「そんな顔しないでください。ロボットと人間は違うんですから」
「そう、だね」
仁が寂しそうに笑ったように見えたのは私の気の所為だろうか。いつの間に、仁は私の感情まで読み取れるようになったのだろう。私の気づかないうちに、仁はどんどん人工知能で感情を学んでいることを実感した。仁と仲良くなれたような気がしたけど、所詮ロボットで、仁が話したり、私にしてくれたりすることは全てロボットの機能に過ぎない。今更、お父さんが『所詮ロボットだろ』と言っていた理由が分かった。
私はほうじ茶味のソフトクリームを食べながら、仁と家まで帰った。ソフトクリームは苦味が口の中に染みた。
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