ヒューマノイド 仁

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 私の18歳の誕生日は夕食を3人でかこんだ。私とお父さんと仁。すごく楽しかった。仁はヒューマノイドで全く笑わないけれど、それでも食卓を囲む人が1人増えたことが嬉しかった。  その日から、学校から帰ってくると必ず仁がいた。研究室にこもりっきりのお父さんはいつも帰りが遅い。自分の帰る家に誰かがいてくれるのは久しぶりで、仁に "おかえりなさい" と言われる度に、嬉しくなって"ただいま"を言った。相手がロボットだと分かっていたけど、ただいまはきちんと言った。というか、私が言いたかった。  仁が家にやってきた私の誕生日に、お父さんから説明を受けた。その内容は、仁はヒューマノイドで、人工知能が搭載されており、少しずつ人間から表情を学んでいくということ。生活を共にすることで、少しずつ人間らしくなって行くだろうということ。  だから、私はたくさん仁に話しかけることにした。 「仁! 今日図書館に行ったら私の気になっていた本が追加されてたの! 」 「それは良かったですね」 「見て見て!すっごくヒロインがかっこいいの! 」 「そうなんですか」 私が本の話をしても、 「ねー今日先生にもっと勉強しろって怒られたぁ」 「それは災難でしたね」 「お父さんは優秀なのにねぇって、担任に言われたんだけど、酷くない? 」 「そうですね」 担任の文句を言っても、返ってくるのは単調な返事ばかり。それでも最近は心無しか少し表情が豊かになった気がする。お父さんに聞いたら変わってないだろ、と言われたからやっぱり気のせいかもしれないけど。  でも、いつかは2人で沢山話したい。ロボットにそんなことを求めるのは間違ってるかな。でも、お兄ちゃんが出来たみたいで、仁がいる日常が楽しかった。
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