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しばらくして、ドアをあける音がした。仁が帰ってきたのだろう。思ったより早く帰ってきてくれた。
「おかえりなさい! 」
私は玄関に出ていって元気に声をかける。
「…ふっ、ただいま」
仁は私を見て、ただいま、と言ってくれた。そこで私が驚いたのは仁が笑ったことだ。そんなに私が玄関に飛び出してくるのがおかしかったのだろうか。
「今笑った!? 」
「いえ」
そう言うと仁はいつもの様に冷たい顔に戻ってしまった。でも、いつもよりも雰囲気は柔らかかった。荷物を持とうと仁の持っている買い物袋に手を伸ばした。
「何買ってきたの? 」
私が手を伸ばすと、仁は私に持たせまいと袋をひょいと持ち上げる。
「牛乳です。隆介さんにもうすぐ牛乳が切れそうだから買ってくるように言われたんです。冷蔵庫に入れときますね。」
仁は少しでも重いものを私に持たせることは無い。仁のさり気ない優しさには毎回心がくすぐられる。いつも返事は淡白で誤解しやすいが、本当は仁は優しいロボットさんなのだ。
「ありがとう」
「いえ」
私がありがとう、と言うと仁はいつもの声で返事をする。お礼は通じなかったかな。
そして、私は冷蔵庫に牛乳を入れている最中の仁に話しかけた。
「ねぇ仁、今から出掛ける気はない? 」
「別に大丈夫ですよ」
二つ返事で了承してくれたのが嬉しくて思わず頬が緩む。
「えっと、買い物に付き合って欲しくて」
「そうなんですか。では仕度してきますので、少し待っていてください。後、隆介さんにきちんと連絡しといてくださいね」
「はーい」
仁はロボットのくせに気が回る。お父さんはほんとに優秀なヒューマノイドを買ってきたなぁと思う。
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