ユメヲミタ

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同じ夢を見る。 夢の中で私は、大きな鏡の前にいる。 鏡の中の私は、両手を真っ赤に染めて、それを見て満足そうに笑っている。 両手を染めるあの色、匂い、温かさ、 あれは、血だ。 目が覚めると、いつも怖くなる。 血塗れの夢が怖いんじゃない。 そんな夢を見る自分が怖い。 自慢したくなるほど幸せなわけでもないけど、絶望するほどの不幸もなく、まさに『可もなく不可もなく』生きてるつもりの自分の中に、どうしようもない闇がある気がして、怖い。 ある朝目覚めたとき、ふと思った。 色も、匂いも、温かさも、リアルな血の感触。 あれは一体、誰の血なんだろう。 ニュースで通り魔事件を報じていた。 『包丁で次々と通行人を刺して――』 一瞬映った犯人は、笑顔を浮かべていた。 ぞっとした。 夢の中でいつも私は、血に濡れた手を見て笑っている。 あれはまさか、予知夢のようなものではないだろうか。 あわてて首を振る。ありえない。 そんなことをするほど恨んでいる人もいないし、ストレスで無差別に刃物を振り回すほど追い詰められてもいない。劇的な人生ではないけど、まっとうに生きたい。 誰かを傷つけることなんてしたくない。 だけど、夢の中の血は、日に日にリアルさを増していった。 このままでは、いつか夢が現実に追いついてしまうんじゃないだろうか。いや、現実が夢を追いかけて、何か取り返しのつかないことをしてしまうんじゃないか。 だってこのごろ夢の中の感触はますますリアルで、目覚めた時にもまだ手が血に濡れている気がして、朝から何度も何度も手を洗っている。 もしかしたら夢遊病みたいに、夜中に無意識に起き出して、誰かを傷つけているんじゃないかと思うくらいに。 そんなことないよね? ねぇ、あれはただの夢だよね? 鏡の中の自分に問いかけてみる。 だけど鏡の中から満足そうに微笑まれたらどうしようと思って、すぐに目をそらした。
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