最後の夜に

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今からこの家壊すから急いで逃げてね(・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!!」 「『はァ!?』」 トートルとソラリィの動揺が同調する。冗談だろ、とトートルが上空を確認するも宣った人物は未だ満面の笑みを浮かべている。 出会って一日も経っていないが、アルグレイが周囲への影響どうこうを考えずに、本気で家をぶっ潰そうとしているのが分かった。 「姉貴、武器(クラウン)を一旦閉まってくれ! このままじゃ死ぬぞ!?」 トートルの狼狽した声にソラリィも、今聞こえた発言は真実であるということを嫌でも伝えてくる。 『ろ、施錠(ロック)!』 「解錠(オープン)! 青色狗の短剣!」 トートルの右手に短剣が戻ってくる。感慨を覚える暇はなく、開いた腕でルイスティを抱え、即座に武器(クラウン)を使用する。 『青色狗の俊足(ドックラン)』 同時期、空中に跳んだアルグレイの落下が始まっていた。しかし慌てるどころか、落下風を楽しむ余地まで持っていた。 右足を覆っていた黒影は蛇のように短剣に絡みつき、彼の次の指示を今か今かと待ち望んでいるようだ。 アルグレイはそれを肯定する。 「銀色狸の身嗜み(タヌキコーデ)右脚(ライト)から右半身(ハーフ)に移行」 騎士が身に着ける黒甲冑に酷似した影が銀色狸(クラウン)ごと彼の右半身を覆っていく。周囲の闇から補う様に甲冑の色は次第に濃く、厚く。 トートルが家からソラリィを連れて出たタイミングと、闇夜の影を纏ったことで長剣と化した銀色狸をアルグレイが振り下ろしたのはほぼ同時だった。 「補填完了。銀色狸の身拵え(タヌキコーデ・ファルス)」 背後の月光に照らされ、甲冑は人目を奪う銀色に煌めく。
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