最後の夜に

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この日、夜空を見上げていた老人は静かに呟いた。 『流れ星のように月が降ってきた』 のちに、これが「だれかの英雄譚の始まり」になることを、先の長くない老人に予見させるには十分な事象であった。 かく言う当事者は全壊した元家をぼんやりと確認し、銀色狸(クラウン)を握りしめ、 「……やり過ぎちゃった」 明日の朝刊の見出しを飾りそうだな、とずれた心配をしていた。
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