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それを恐る恐る舐めた後、目を見開き、まじまじと飴細工を見る。
「和ノ國の者は凄いな。飴でこんなに見事なものを作るのか」
アクトリアにも飴はある。飴細工のような飴はなく、かたちはただ丸めただけだが色々な味を楽しむことができる。初めて食べた時、今のアンセルムのような自分もしていた気がする。
「食べてしまうのが勿体ない」
「ですが、食べて貰えぬ方が可愛そうです」
「そうだな」
飴を食べながら町を見て歩き、そして鶴屋の前へとたどり着く。
その頃には二人の飴は小さくなっていた。
「少しだがジンと町を歩けてよかった」
仁も意外と楽しかった。だが、それを素直に口にすることはしない。アンセルムが調子付くのは嫌だからだ。
「それでは失礼します」
つれない態度をとり、きた道を戻ろうとした、その時。
「明日、ジンは実家に行くんだよね?」
と聞かれて、何故それを知っているのかと思わず振り返ってしまった。
「私も連れて行っては貰えないだろうか」
その眼が何かよからぬことを考えているように見える。
「無理です」
「何故だい? 御両親にご挨拶をさせて欲しい」
嫁となる予定として。きっとそう言いたいのだろう。
考えていることが解ってしまい、頑としてそれは拒否しなければいけない。
「親子水入らずで話したいので」
そう言ってしまえばアンセルムは渋々ではあるがしょうがないと諦めてくれた。
「ありがとうございます」
お礼をいう必要はないのだが、そう言って頭を下げる。
「お会いしたかったが、しょうがない、か」
ふ、と、暗い表情をし、上手くいかなかったことが悔しかったのかなと仁は思う。
だが、すぐにいつもの調子で、仁にまたねと投げキッスをしてよこした。
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