王子は船乗りに恋をする

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 嬉しいよ、なんて言いながらアンセルムは仁の額に口づけを落とした。 「……貴方って本当にポジティブ思考ですよね」  じっとアンセルムを見れば、ふっと笑みをこぼし唇へとキスをする。  それを応えるように口を開けば、アンセルムの舌が歯列をなぞり、口づけはさらに濃厚なものになる。 「はぁっ」  ちゅっとリップ音をならしながら、甘く息をはきだして。  濡れた唇を何度も、何度も重ね合い、熱のこもった眼差しで見つめ合う。 「ジン」 「ん、アンセルム、さま」  互いの唇が離れていき、名残惜しそうに濡れた唇を見つめる。  アンセルムは愛おしそうに仁の頬を暫く撫でた後、上着のポケットへと手を突っ込み、中から小さな箱を取り出した。 「これは?」 「いつかジンに渡そうかと思って作らせておいたんだよね」  とそれを掌の上へと置いた。  開けてみてと言われ、中を開けてみればそこにはシルバーリングがあった。  智広の護衛も兼ねているため、一緒に商談へと着いていくことが多く、いつの間にか良い品を見極める目が養われていた。それ故にアンセルムからの贈り物がどれだけ素晴らしかがわかる。 「良い腕の職人ですね」 「君はチヒロと共に商談に行くことも多いでしょう? だから誰に見られても目を惹くような品をと思ってね」  確かにこのリングは目を惹くだろう。意外と相手は自分たちの身なりを見てくるものだ。 「ありがとうございます、アンセルム様」  その気遣いが嬉しくてその身を抱きしめた。 「ふふ、喜んでもらえてうれしいよ」 「アンセルム様、俺からもお渡ししたいものがあります」  アンセルムから身を離し、箪笥の上に置いてある小物入れの中にある巾着袋を手にし、中身を取りだして彼へと手渡す。 「これは、和ノ國の櫛かい?」  と、仁から渡されたものに、アンセルムは目をパチクリさせる。
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