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櫛には椿の花が彫られており、どうみても女性ものである。それを手渡されて戸惑っているのだろう。
「はい、そうです」
若い娘が好みそうな櫛をアンセルムに手渡すのはどうかと思っていたのだが、母親から娶りたいと思う相手ができたらあげなさいと言われて持たされたものだから。
「和ノ國では娶りたいと思う女性に櫛を贈ります」
その先に続く言葉を期待するかのようにアンセルムが仁を見つめている。
そう、この先に続く言葉は間違いなくアンセルムが期待する通りの言葉なのだから。
「アンセルム様、俺の伴侶になってくれますか?」
「あぁ、もちろんだとも!!」
幸せだよと櫛を大切そうに握りしめ、仁の唇に唇を重ねた。
「ん、あんせるむ、さま」
先ほども深く口づけもだが、アンセルムとのキスは仁へ甘い疼きを与える。
何度も音を立てながら唇を啄んで、ほうと甘い気を吐き見つめ合う。
「ねぇ、ジン、私達は伴侶となるのだから敬語と様付をやめてくれないかな」
と言われ、仁はすぐにその提案を受け入れる。
きっと、前に襲われた時のように余裕がなくなってしまいそうだから。
「あぁ、いいぜ。その方が俺も楽だ」
敬語は堅苦しくていけねぇよと口角を上げる。
話し方ひとつで雰囲気がかわったかのようで、アンセルムがニヤニヤとした表情を浮かべている。
「な、なんだよ」
「いや、その口調のジンは雄雄しいよね」
うっとりと見つめられて仁は照れくさいのを隠す様に、アンセルムの顔を自分の手のひらで覆えば、そのまま掌に口づけをおとしはじめる。
「お、おい」
真っ赤な舌が指の付け根を舐り、人差し指を咥えられてしまう。
「アンセルム」
「ん……」
仁に見せつけるように扇情的に舌を動かす。
その姿に下半身が疼き、仁はたまらず前かがみになってしまい、それを見逃すアンセルムではなく、そのままベッドへと押し倒されたかと思えばその上に跨る。
「この前の続き、しようね」
と服を脱がされ、肌を手が舌が愛撫していく。
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