王子は船乗りに恋をする

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 壁に手をつかされて、後ろから放った欲をかきだされる。  その度に後ろが疼いたが、口に出したらもう一度と言いかねないので黙っていた。 「ジン、ありがとうね」 「……礼を言われる筋合いはねぇよ。俺も望んだことだ」  まさか男を受け入れることになろうなんて思わなかった。  アンセルムの想いが、仁をこうさせたのだ。 「すごく嬉しかった」  間近で微笑むアンセルムを見たら、我慢していた気持ちがあふれ出た。  あぁ、もう駄目だ。諦めるように深くため息をつく。 「え、えっ、ジン、呆れたの?」 「ちげぇよ」  手を掴んで自分の物へと導く。たちあがってかたくなったモノに触れて、アンセルムは綻んだ。 「いいよ。何度だって気持ち良くしてあげる」  折角、掻き出した中へ、アンセルムのモノがはいっていく。 「あぁっ」  それが嬉しくて身体が喜んでしまう。 「可愛い」  ちゅっと音を立てて髪にキスをし、後ろを突かれて互いに放って身体と気持ちが落ち着いた。  もう一度掻き出した後に湯船につかる。 「また、ジンに求めて貰えるなんて思わなかった」 「俺もアンセルムを求めることがこようなんざ思わなかったぜ」  好きだ、と、こめかみのあたりに口づけをすると、労わるように抱きしめられた。 「嬉しいよ、ジン」  アンセルムのエメラルドの目が潤みだし、仁はわざと乱暴にアンセルムの髪を撫でた。 「うわ、ちょっと」  何をするのと身体を引き離される。 「笑え」 「え?」 「俺が傍に居れば笑っていてくれるんだろう?」  そう口角を上げれば、目尻に浮かんだ涙を拭いながらアンセルムは微笑んだ。  それからの二人。  仁が船旅を終えて家に帰ると、笑顔のアンセルムに出迎えられる。その姿を見ると疲れが癒されていく。  美味い料理がテーブル一杯に並べられており、話をしながらそれを食べて、寝る時は一つのベッドで温もりを感じ合う。  それがとても楽しくて愛おしい。仁にとって、大切な時となった。 <了>
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