漆黒病

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漆黒病

 漆黒病(しっこくびょう)。  セツナがその病気にかかったことを、僕は彼女のお見舞いに訪れた時に知った。 漆黒病は、光を失った僕ら人間にとって不治の病。 それは生まれつきとも、人から人へと伝染する病気とも言われている。 病にかかった人間は、身体が動かなくなり、最後は暗闇の中に溶けていくように身体が黒くなっていくという。 年齢が若いほど病気の進行は早く、一年も経たないうちに命を落としてしまう怖い病気。  僕は、セツナがそんな病にかかってしまったことを、彼女の母親から聞いても信じられなかった。 だってセツナはあんなにも無邪気に、そして楽しそうにあの時笑って約束してくれたのだから。  何としてでもセツナを助けたかった僕は、一人こっそりと図書室に忍び込んだ。 空の秘密が書かれた本があるのなら、きっと漆黒病を治す方法が書かれた本だってあるはずだと信じて……
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