卯月のかりそめ

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卯月のかりそめ

 本日から、私、九重愛心(ここのえあこ)は高校一年生だ。訳あって、志望校の高校には行けず、家から1時間半の田舎の高校に通うことになった。仕方ないか、と思いつつも志望校に行きたかった気持ちと、これからの高校生活の期待、半分半分の中途半端な新生活だ。  登校日初日。  学校指定の鞄に靴、靴下にキッチリとしたスカート丈。新品のシワのないブレザーを着た私は駅のホームでぼぅっと空を見上げていた。周りにはピカピカの制服に身を包み、これからの生活にウキウキとした同じ学校の同級生達がスマートフォンをいじっていたり、友達と話をしたりしていた。  そんな子達を横目で見つつ、私は鞄の中身を思い出す。高校入学と同時に買ってもらったピカピカのスマートフォンは学校の規則で持ち込みを禁止されているから家に置いてきた。入学式で渡された課題のプリントはちゃんと解いて持ってきた。大きな忘れ物はないだろう。私は馬鹿がつくほど真面目だと自分でも思う。  「プーーーーー!!」  と音を立て、電車がホームに入ってくる。さあ、私の新しい生活の始まりだ。  慣れない電車に、新品のブレザー。何もかも新しい世界。志望校に行けなかったからって下を向いていても仕方がない。 「プシューー……」 電車のドアが開き、電車へ足を踏み入れる。これから、どんな友達が出来て、どんなことをしていくのだろう。心做しか、少し新生活に心を弾ませている自分がいた。
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