01. 旅の始まり

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それは大学生活が 終わりを告げようとしていた 春の息吹を感じる3月初旬の出来事だった。 僕の名前は高村コウ 今は同じ下宿で共に4年間過ごした 友達のやまちゃん、シンちゃんと3人で 旅に出ている。 ちょっとした卒業旅行だ。 やまちゃんがゼミの教授から薦められた ある田舎街が今回の目的地。 目指す場所は「袖引村」 ガイドブックにすら載っていない マニア向けのスポットだと言う。 そこは昭和初期の風景をそのまま残した まるでタイムスリップしたような場所らしい。 にぎやかな街の外れにその村だけがぽつんと まるでテーマパークのような感じで存在する そんな不思議な空間があるんだと やまちゃんから聞かされていた。 袖引村に入り、途中で車を駐車場に停め 3人で目的地を目指す。 ここからは歩かないと この先、道路がまったく整備されてない。 とても観光地とは思えない閑散とした風景。 その先に「ようこそ袖引村へ」と書かれた 看板が取り付けられた小さな入り口を見つけた。 そこは橋架の下をくぐり抜けるような 細い通路になっていた。 この場所からは出口が見えない、 まるで未知の世界への洞窟だった。
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