04. 幸せの意味

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世に言う「神隠し」とは全て この村へ紛れ込んだ人なのだろうと やまちゃんが教えてくれた。 無事に帰って来た者ですら この村のことを誰かに話す者がいたとすれば それは稀有なパターンである。 「じゃ、先生は何でやまちゃんに託したんや?」 「…先生は、あの村の隣町の生まれらしい」 「それじゃ…」 「子供の頃から都市伝説みたいな感じで聞いてたって」 「実際には…」 「行ったことはないんやて…」 「何やそれ!」  「俺らを使って真相を究明させようとしたんかな?」 「俺らならきっと謎を…って考えた、そう思いたい」 「しかし、この村って一体?」 「何なんやろ?と思うやろ」 やまちゃんが聞いた話では この村は人の心の隙間に生を成した 現実と倒錯の世界の狭間に位置していて 人の良心や憎しみ、余念から生まれた 「架空の村」だと言う。 それならば何故、やまちゃんは この村へ行こうと思ったのか?と聞くと ここに来れば 「思い出を取り戻すことが出来る」 そう言われたからだそうだ。 「俺、先生から聞いてん。思い出を取り戻すとささやかな幸せが得られるんやて」 「ささやかな幸せ」とは何かを知るために この村を訪れる人も多いらしいが それは何だったのか?と聞かれると 皆一様にして口を閉ざすため 実際に行くしか手段が残されていない、 と言う訳だ。 そこでの体験はあまりにも不可解すぎるため 誰に話しても信憑性がないから、 なのかも知れない。 実際に僕たちが今、その体験をしている。
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