02. 冥界の子供たち

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目は虚ろでその表情には まるで生気が感じられない。 とてもこの村のキャラクターとして 「演じている」のではなく 正に死者そのものではなかろうかと そんな錯覚に陥ったのは僕だけではなかった。 ここで僕たちはオプションで 「線香アート」なるものを楽しむ。 僕がやっているのは 線香を炎で溶接のように 数メートルも繋げていくと言う 不思議なアトラクション。 子供たちが不思議そうな それでいて興味津々な顔で僕を見ている。 シンちゃんはアニメのキャラクターを 線香の煙で描いている。 そして僕に自慢そうに見せてきて それを見た子供たちは やんやの歓声を上げて喜ぶ。 するとこれまで生気の感じられなかった 子供たちがようやく「この世の子供たち」と 同じような笑顔に変わった。 やまちゃんが言う。 「花火が上がると、この村に歓迎されてて その日はめっちゃラッキーなんやて」 そう言った矢先、目の前に見える山の上に 大きな打ち上げ花火が3発、 まだ明るい空にはっきりと見えた。 「3発ってことは3人とも歓迎されてるんかな?」 「せやろな」 するとやまちゃんはそれが合図のように 「ほな、行こか」と僕たちを促す。 名残惜しそうな子供たちに後ろ髪を引かれながらも 僕たちは「大焼香場」を後にする。 その場を去ろうとする僕たちに向かって 子供たちが言う。 「よかったらあの山にも行ってみてください」 僕たちはその言葉に従うかのように 山のある方角へと進んだ。
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