03. 男の正体

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再び洞窟のような暗い道を潜り抜けると 目の前に飛び込んできたのは 廃墟と化したマンションか病院のような 鉄筋の建物。 全ての窓が少しだけ開いている。 僕たちのいる場所からは中の様子は見えないが 明らかに全ての窓から不気味な視線を感じる。 すると目の前にまた あの「青い長袖シャツの男」が現れ 何かブツブツ言いながら 再び僕の膝を軽く蹴った。 やまちゃんの忠告通り 僕は今回、彼を全く無視して尋ねた。 「やまちゃん、山はあっちの方角ちゃう?」 するとやまちゃんはこう答えた。 「コウ、山へ行く時間はもうないな。日没までにこの村を出なあかん」 「ほなあっちへ行かな、さっき俺らは向こうから来てんで」 「コウ…俺、行く前に先生から聞いたんや」 やまちゃんが言うにはこの村から出るには 来た時の道をそのまま引き返すと 別の世界に紛れ込んで帰れなくなるらしい。 入口とはまた別の場所に 非常口のような出口があり 日没までに そこから出なければならないらしい。 もしも別の場所から出てしまうと… 「また元に戻って、あ、『あいつ』みたいになるんか!」 「『あいつ』って誰やねんな?シンちゃん!」 あいつとは 「青い長袖シャツの男」 「あいつだけやない、あの建物から覗いてた 全員みたいに…」 「ここに一生…取り残されるってわけか」 「あの人たちは…」 「きっと…子供たちに」 「何かしらつれない行為をした、その結果」 「あの男に…導かれて」 「せやな」 青い長袖シャツの男… 彼は何者だ? 「…オレ、何か見覚えがあると思ったら」 進ちゃんが言うには その男は児童連続誘拐殺傷事件で 指名手配されていた 顔写真の男と瓜二つだそうだ。
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