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『給与計算』というのは実に面倒臭い。
全従業員--役員、社員、パートタイマー、アルバイト、合わせて300名--の給与、総支給額から社会保険料、住民税、所得税、その他控除するものがきちんと引かれているか、確認するのが私--松嶋みのり--の役目だ。
もちろん、計算自体は給与ソフトがやってくれる。
やってくれるのだが。
ソフトがやってくれるのは入力済みの住民税、社会保険料の控除を反映させる他、雇用保険料と所得税の計算のみ。
月給に対する欠勤控除やら有休付与、インセンティブの増減はExcel上で計算している。
そのデータを給与計算ソフトへインポート--ソフトへデータを入れる作業、を--し、社会保険料やら住民税、所得税などの控除額をソフト上で計算、実際に従業員が手にする支給額が決定する。
給与ソフトで計算した後はデータをエクスポート--ソフトのデータを取り出す作業、を--し、Excelの総支給額と照らし合わせる。
基本的に一つのデータを移動させているだけなので誤差が生まれるはずはない。
……ないのだが。
総支給額がズレている。
その誤差『100』円--。
今回は暫定版なのでそこまでピッタリと数字を合わせる必要はない--確定版までに原因を究明、解消すれば問題ない--のだが。
それでも数字が合わないのは気持ちが悪い。
総支給額欄のフィルターのプルダウンから『100』という数字を確認するが。
「……ない」
育児休業や傷病休業などの支給額0の人に、間違えて100円支給している訳ではなさそうだ。
となると。
考えられるのは二名以上の誤差があり、その差額が『100』だった、ということになる。
「……はぁ」
仕方なく、VLOOKUPでデータを引っ張ってきて、給与ソフトからエクスポートしたデータとインポート前のデータを比較する。
……正直、関数を使うのは苦手だ。
VLOOKUPは集中力が途切れると何列目まで範囲指定したのかわからなくなってしまい、同じ作業を何度も繰り返す羽目になる。
VLOOKUPでデータを反映させた後に使うIF関数についてもベースにするデータを間違えると欲しい結果が出ない。
恐らく、関数に秀でている人であればもっと複雑に組み合わせて、バッと結果が出せるのだろうが。
今の私に出来るのは比較するのが精一杯。
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