0人が本棚に入れています
本棚に追加
いってきまぁす
そう叫んで外へ出た。
東京タワーに走りでる。
するとすぐそこで赤い猛犬がやってきて
がぶりと僕の腕を噛む。
血がどくどく流れ出し、僕はぎゃあと呻いた。
「何するの。やめてくれ」
赤い猛犬を蹴飛ばすと
猛犬は風船になって破裂した。
朝焼けが割れた風船を全部吸い取って
僕を東京タワーの近くまで連れてった。
どうせなら、東京タワーの中まで連れてってくれれば嬉しかったけど
それは流石に贅沢だ。
赤い車にはねられて
赤い車がぶっ壊れた。
猛犬の方が強かったんだなと
僕はそう思た。
赤い雨が降ってきて
世界が全部赤で塗りつぶされた。
コンビニに入ると
おにぎりまで真っ赤っか。
仕方ないからそれをレジに持っていく。
108円。
じゃこれで。
店員の目は赤い雨で目潰しされてたから
千円札を渡して
「一万円です」と嘘をついた。
「はい、お釣りは9892円です。大きい方の9000円から」
私は騙されないぞとしっかり赤い雨をぬぐって札をよく見た。
しめた。これ全部一万円だ。つまり90892円を店員は渡してきたことになる。大損だ。
なのにありがとうございましたとお辞儀をされた。得した得した。
外では車がみんな停まってた。
見えないもんね。
せっかちな人が事故してるのも見た。電柱と闘ってフロントを凹ましている。
僕はすぐそこが東京タワーだから、足が滑らないようにだけ気をつけて進む。
着いた。
中に入ってエレベーターに乗る。
私の他には大玉トマトが乗り込んできた。
「やあ、おはよう」
「おはようございます」
トマトと挨拶を交わして上へ登っていく。
それでキッカリてっぺんまで行けると思ってた。
でもトマトはそれから黙ってたくせに、いきなり裏切った。
「あのですね」
「何ですか」
「喰らえっ!!!」
バチュンンン
トマトが膨張して破裂した。
おかげで僕はエレベータの壁を突き破って吹っ飛ばされた。
風を切っていく。
赤い雨はそのうちまた猛烈に降り出した。
その中を飛んでいく。
……どれくらい経ったろう。
僕は壁にガツンと突っ込んだ。
痛くはなかったが、その壁から抜け出すのに時間がかかった。
赤い雨でツルツルしてなかったら一生抜け出せなかったと思う。
脱出した後で確認すると、それは山の崖だった。
雪が積もっている。赤い雪だ。
向こうにバスが見えたので行ってみると、「ここは富士山五合目です」と言われた。
成る程、静岡県だ。
赤い富士山を僕は登る。
途中登山者もちらほらいたけど、みんな視界が見えないながら頑張っていた。
僕はそんな人たちを抜いて頂上へ着く。
真っ赤な山から、真っ赤な下界がよく見えた。
最初のコメントを投稿しよう!