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一節 神楽殿
険しい獣道のような岩壁の、けぶる緑に覆われた細道の先にひっそりとありまするのは神楽殿が一つ。
小橋を渡ればその先の敷地は広大でありまして、私はついぞ端から端までを歩いたことはありませなんだ。
その敷地の豊かさは、町へ出ずとも森や川が恵む自然の営みに生かされて事足りるほどのものでありました。
神楽殿の方はと申しますと、金属や塗料の装飾などは一切もなく、全てが木で設えられた御社にございました。
中は全てが引き戸で開閉出来る造りでありまして、裏戸から数えて巫女とその他の者とに分けられた控えが一つずつ、神事に使いまする神楽物置き場などがございまして、短い回廊を進みますれば神楽舞台に辿りつきます。
内装の装飾がないのは外周と同様、舞台も立派な造りながら透かし彫りの一つもございませんでした。
さてその神楽殿、どのような神事が執り行われていたのかと申しますれば、それが今回のお話。
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