酔醒教 幹部の日誌

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酔醒教 幹部の日誌

 親友が宗教を作った日、私は不思議な感動に包まれていた。  彼女のカリスマ性を長年傍で見てきた私さえその変容を受け入れるのは容易かった。彼女は遅ればせながら漸く相応しい立場を手に入れたのだ。  その日親友は私達を集め改めて語った。創世のこと、教義のこと、哲学のこと、彼女が構築した全てを。それらに心酔してここにいる私達だったが、その支配をひとつに並べられると、世界を理解するのは彼女だと改めて悟った。  宗教が生まれる過程を私は見ていた。初め、彼女はただの恵まれた少女でしかなかった。言葉遣いや所作からは、溢れんばかりの愛情と優しさゆえの厳しさを享受して育ったことがありありと分かる。  彼女は他者への気遣いを絶やさなかった。元を辿ればそれだけの“余力”を有していた。それに惹かれた者も多かったと思う。その優しさも強さもしなやかさも全て“余力”から来ていたように思われる。それを一番奥から支えていたのが彼女の愛だ。誰のために行動しても自分のことしか見ていなかった。終着点はいつも彼女自身だった。  そんなところが、大好きだった。
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