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妻と男友達
「赤んぼ赤いなあいうえお」
「あめんぼ、やろ」
「知ってるよ。でも赤んぼも赤いでしょ産まれたては」
「知らんよ見たことないもん」
「あ、お子さんまだいないの」
「いや三人おる」
「じゃあ分娩に立ち会ったことがないと」
「いや最近うちの近所ではね、もう分娩はやってないの」
「……えっと、分娩はやるやらないが選べたんだっけ。分娩って、あの、胎内から胎児が出てくることを言うんじゃないの」
「桃から産まれてきた」
「何て」
「正確には、桃のような装置から産まれてきた。三人とも」
「……」
「うちの妻が、子は欲しい、でも痛いのは絶対嫌だ、痛みイコール愛情とかありえない、でも子は欲しい、って言っててな」
「うん」
「そしたらうちの隣にある産科で、それできるよ、って言われて」
「ほう」
「俺の精子と、妻の卵子を、その装置に入れて、受精させて育てて、十か月経ったら誕生した」
「あ、やっぱり十か月はかかるんだ」
「それはね、今はまだ自然成長に任せてるんで、そのくらいかかるらしい。けど、成長促進技術が洗練されていけば、もっと短くできるだろうとは言ってた」
「電子レンジみたいに、入れて三分経ったらチンって取り出せるみたいな」
「みたいな」
「それで三人」
「そう、あのね、つわりとかそういう妊娠期間中の不快感が一切ないから。当然のことだけど、まったく普段通りに暮らせる。これはでかいよ」
「でかい、というか革命的だよね。何でこれが世に知られてないわけ」
「それは先生の方針じゃないの。あと、装置も一つしかないし、今は時間もかかるから、宣伝する気はないんだって。殺到されても困るもんな」
「物理的な問題もあるのね」
「俺もね、たまたまその先生とご近所さんで、妻がこんなん言ってるんですよね、って世間話のつもりで話してたら、いや実はこんなん作っててね、って見せられたの。試してみないか、って誘われたから、お願いします、って頼んだわけ」
「軽いね」
「一人目が無事に生まれてね、健康に育っていったもんだから、先生またお願いします、って頼んで、今三人」
「何歳だっけ」
「上から三歳、二歳、一歳」
「年子」
「そう、産むのには楽したけど育てるのには楽できんから。ろくに寝れんし、外出は毎回ミッションだし。大変よ」
「お金は」
「通常と変わらなかったよ。五十万いかないくらいだったかな」
「え、やりたい。それで産みたい」
「お前もうお子は?」
「いるよ一人。自然分娩で産んだよ。妊娠中から産んだ後まで大概しんどかったよ。だからさ、二人目はこれで」
「じゃ今から先生のとこ行くか」
「行く」
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