第二通:近況報告

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第二通:近況報告

水澤慶 様 拝啓、 先日はご返信有難うございました。皆様ご無事で本当に安心致しました。 再び手紙を送ってしまい申し訳ございませんが、前回の手紙は安否確認のみでしたので、勝手ながら私の近況報告をさせてください…。 現在、私は中高生が通う学習塾の講師をやっております。 主に教えている教科は英語です。 英語を含め語学そのものに魅了された私にとって英語講師という仕事は適職だと感じています。 英語は人に伝える事=コミュニケーションを主としている言語であり、会話にせよ、文章にせよ、効率よく齟齬がないように伝達できる仕組みになっています。 他のヨーロッパの言語に比べ、文法のルールはシンプルなのですが、その代わり「綺麗」などを表現をするための言葉が何種類もあったり、動詞と前置詞の組合わせで何万通りの表現方法があり奥が深いです。 受験生に私が惹かれている英語の魅力についてを語るのは生産性があまりないので、私は受験で必要なエッセンスのみに絞り、講義を受けている子達のレベルを推し量りながら毎回の講義を進めています。 生徒達に気づいてもらいたいのは、日本語と英語は言語としての概念が全く違うという事です。 そのため英語そのものが持つ性質を伝え、単純暗記ではなくルールを覚えたら解ける数学の方式のように伝える努力をしています。 それをわかってくれる子からは感謝されますが、余計に複雑にしたという子にはその原因を探るべく講義後理解できなかった理由を聞く時間を設けています。 語学というテーマを置いた上での生徒との意見交換は刺激的です。言葉は使う各々がそれが正しいかどうかを真剣に考えるツールで個人にとってこんなに差があるとはといつも驚かされます。 慶くんが数学教師になっているのを知り立場は違えど嬉しくて思わず報告してしまいました。 敬具 平成28年3月20日 杉崎ほのか
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