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第七通:告白
慶くん、明けましておめでとうございます。
少し遅い年始の挨拶になり申し訳ございません。
センター試験が終わるまで落ち着かず手紙を書けませんでした。
受験を抱える生徒からのプレッシャーと日に日に大きくなる涼くんへの恋心で精神が不安定になっていました。
インフルエンザは流行り終わりにかかると症状が重くなるように、ふいに襲ってきたこの恋は、耐性が低い私を苦しめています。
涼くんから彼も毎日公園で夕日を見てると言われた次の日、結局いつもより少し早い時間に私は公園に行きました。
緊張からか私はホッカイロを握りしめ、寒さで空気が澄んだ空に赤く色を変えだした夕日を眺めました。
夕日がゆっくり沈みだした時、私はそっと後ろを振り向くと、遊技場の方に濃紺のダッフルコートを着てリュックを右肩にかけ佇んでいる男子生徒を見つけました。遠目だけど背丈でわかります。あれは涼くんでした。
私達は同じ時間に同じ夕日を少し離れた場所で眺め、言葉を交わさず各々塾へ向かう日が数日続きました。
私にとってその数日はすごく素敵な経験で永遠にこの平和な時が続けばよいと思ったくらいです。
年末年始の数日は塾が休みだったので、公園には行きませんでしたが、年始の塾開始の日、私はいつもの時間に公園に行きました。
その日は彼が先に着いていました。彼はいつものポジションではなく私がいつも座っている隣のベンチに腰掛けていました。どうしようか迷いましたが、結局私もベンチに座り、目が合ったので年始の挨拶を交わしました。
彼は挨拶以上の会話をしようとせずただ夕日を見ていました。私は夕日に集中できず急に距離を縮めてきた彼の心境が気になってました。
彼はそんな私の心配は気づかず夕日をエンジョイしているように見え、モテる人は余裕があるんだ、私が学生時代から何も変わってない。と恋愛のカーストを感じ自分を卑下していた時です。
「先生、杉崎ほのかさん、僕はあなたが好きです。色々考えたけど、それが僕があなたに抱く感情でした。先行きますね!」
突然の彼の告白に私は驚き戸惑いました。
返事はいらないという意味なのでしょうか、次の日から彼は公園に来なくなりました。
国立大志望の彼は、センター試験に集中したいのもしれない。
試験が終わってからまだ彼には会っていません。
慶くんも受験生を抱える中こんな手紙を送ってしまい申し訳ございません。
かしこ
平成29年1月27日
杉崎ほのか
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