第八通:逸脱

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第八通:逸脱

慶くん、お久しぶりです。 先日は唐突な内容の手紙で申し訳ございませんでした。 今日、久しぶりに涼くんに会いました。 既に特進の生徒は受験本番の為塾にはいないので比較的早い時間に全ての講義を終えて帰ろうとしていた時、塾長から呼び止められました。 何事かと思い話を聞くと、涼くんの母親から電話があり、息子が受験を終え先程東京から空港に着いたけれど、ご両親とも出張中で市内におらず迎えに行って欲しいと依頼されたそうです。 私は塾長の代わりにこの依頼を受けました。 今まであれこれ悩んだ事は吹っ飛び、マイカーを走らせている間、彼に久しぶりに会える高揚感に心を躍らせてました。 釧路の空港は町中から車で四十分くらいの距離です。空港に近づくと彼が屋外で一人で待っているのが見え、私は即座に助手席を開け彼を車内に導きました。 久しぶりに会う彼はより一層男らしくなっていていました。 彼はまず塾に頼む彼の両親の傲慢さを詫び、話し出しました。 「試験は杉崎先生の対策問題集があったから乗り越えれました!過信かもしれませんが第一希望校大丈夫だと思ってます。」 彼の報告受けて、誇らしい気持ち半分、いよいよ行っちゃうのかという寂しさ半分で複雑な表情をしてしまったと思います。 それを見て彼は「進学含めて色々話がしたいんです。どこか二人っきりになれるとこありませんか。」と車内での二人の距離を縮めてきました。 この時間に塾講師の私と涼くんが喫茶店みたいな人目につく場所にいると噂を立てられるかもしれない。 「誰にも見られたくないから。」 考えた結果、私は国道沿いのラブホテルに車で入場しました。 自分の行動、彼に向かって放った言葉のトーン。すべて今までの私ではありえない行動です。もう一人の私が動いていたような感覚でした。 彼は驚かず「確かに誰にも見られませんね。」と小声で言いました。 駐車場からホテルへの部屋は直接繋がって、極力人と会わないシステムになっているのは知っていますよね。 部屋は田舎のホテルなのでケバケバしいだろうと予想したのですが、改装されたばかりでシンプルな作りでした。 私がコーヒーを用意している間、ソファーに座る彼を改めて見つめました。いつもの制服ではなく白のセーターと濃紺のジーンズ姿は大学生のように落ち着いて見えました。思わず見惚れていると彼は核心に迫ってきました。 「先生の事好きって言ったの覚えてますよね。先生は僕の事どう思いますか?生徒ではなく男としてです。」 私の『悪』の部分が体の中でカッと放たれた感覚を受けました。 好きよ。その想いはもしかしたら涼くんが私を想うより強いかもしれない。今すぐでも涼くんに触れて本当の気持ちを言いたい。 『悪』に負けないため私はそっと左肘を右手で抑え言葉を出さないように堪えました。 コーヒーを淹れるため私は涼くんに背中を向けた瞬間、私は彼に抱きしめられてました。 「先生に言葉で聞くのは卑怯ですよね。ごめんなさい。」 これ以上何を言えばいいんでしょうか。やっぱり生まれつき運動神経がいいとか頭がいいとかと同じように恋愛の上手い下手ってあるんじゃないかなと抱きしめられながら私は思いました。 「先生とどうにかなりたいとか、僕よくわからないんです。だけどずっと先生の事考えてるんです。久しぶりに会えて嬉しい。好きです。」 自分の気持ちを言えないってなんて辛いんだろう。お見合いで結婚していた時代、他に想いの人がいる人はこんなに苦しんでいたんだろうか。私は彼を好きとは言えない。今の私には自由なんてない。 声を出さなきゃ。やめてって言わなきゃ。両手を振りほどかなきゃ。考えれば考えるほど混乱し、私は年甲斐もなく両目からいっぱいの涙を流していました。 このまま、私が強く抵抗すれば涼くんは諦めてくれる。でも私が思った気持ちはなんなの?強い本能は運命を切り開く力があるっていうの? 私が抵抗しない事が分かった涼くんは、人が入れ替わったと思うくらい慣れた手つきで私をベットに導き私の服を脱がし私を抱きました。 避妊具はつけず器用に膣外射精をする彼に抱かれながら嬉しさと後悔そして何人の女性を抱いたのかと思う強い嫉妬で私は気が狂いそうでした。 気づいたら既に二時間が経過しており、私達はホテルを出ました。 彼は助手席から私の左太ももをずっと握ってました。 慶くん、私は今日二つの罪を犯しました。青少年への淫交と主人への不貞行為です。この日のために神様は私に子供を授かる事を拒否したのかもしれない。 乱文ごめんなさい。 平成29年2月27日 杉崎ほのか
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