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ズキン、ズキン。
腕に痛みを覚えた。例の場所だ。僕は腕を押さえてもう一度椅子に腰かける。
「どうしたんです?先生?」
「いや、腕をぶつけたか何かしたんだろう。赤い痣が出来ていてね。腫れている場所が痛むんだ」
「それはよくない。病院行きました?」
「いや、まだだよ。明日行こうかと思っていてね」
ズキン、ズキン。
ウッ。思わず痛いのが顔にでてしまう。
「先生、飲みにいくの今度にしましょう。怪我があるんじゃ良くないですよ」
「なに、なにたいしたことはないよ」
風邪で熱あるだとか、腹痛で転げまわる程痛いだとか、そんな病気なら飲むのを止めていたかもしれないが、たかが打ち身である。
「そうですか?あ、タクシー来ましたよ」
大島君は先に車に乗り込んだ。
「チー、チチチ」
何処かで鳥が鳴くような声が聞こえた。
「やあ、ママさんまた来たよ。今日は仕事の仲間を連れてきたんだ。出版社の大島君さ、いい男だろう」
「あら、先生いらっしゃい。今日はお友達と一緒ということは現金で払ってくれるんでしょうね」
「あ、ママったら野暮な事をいいやがる」
僕は笑ってウィスキーをダブルで頼んだ。
「先生、相変わらず強いな、よし、僕も同じ物をください」
大島君が身を乗り出す。
「ははは、大島君は無理しなくていいんだよ」
「酔っぱらったらママに介抱してもらいますよ。先生の言った通り美人なママさんですね」
「あら」
ママはくすりと笑うと器用にウィスキーのロックを作った。
ズキン、ズキン。
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