俺達をちゃんと見てくれないか?

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俺達をちゃんと見てくれないか?

俺達はいつも三人一緒にいる。 そして、高い所から鉄の塊が動く姿や人間が歩く姿を観察していた。 「あーぁ、危ないなぁ。」 「どうした?赤也(あかや)?」 青井(あおい)の問い掛けに、俺は下を示した。 そこに居たのは、腰の曲がったお婆さん。 腰が九十度程曲がり、首も思うように上がらない様子だった。 その為、俺達の方を見ずに横断歩道を渡ろうとしていたのだ。 だが、近くにいた若者に助けられ、難を逃れた。 「俺達は高い位置にいるからなぁ。」 青井(あおい)は苦笑しながらも、お婆さんを見守っていた。 「そうだな…俺達の方が下に行ければ良いんだけどな。」 「ここじゃ無い所だと、いっつも寝そべってるヤツがいるみたいだぞ?」 「そうなのか?」 「ああ、ただ いつも踏まれて痛いらしい。」 「ハハハ」 俺は乾いた笑いが出てしまった。 踏まれるのは好きじゃない。 たまに鳥が俺達に止まるが、それも苦手だ。 「お前らは良いよなっ!いつも皆から注目されてさっ!」 「どうしたんだよ、浅黄(あさぎ)……。」 俺と青井(あおい)の真ん中にいる浅黄(あさぎ)は頬を膨れさせていた。 「俺がスポットライトを浴びた時なんか、「急げーっ!」って感じで、鉄の塊も人間もスピード上げるんだぜ!?いや!!止まれよっ!?何で止まらない!?」 浅黄(あさぎ)の言葉に俺は頷く。 「分かるわ、それ。俺がライトを浴びた時にもあるし。」 「それこそ危ないし!!」 「だろ~?鉄の塊が無かったら、歩き出すんだよな。いやいや、向こうから来てるし、て思う。」 「他の人もやってるからじゃないか?皆でやれば怖くない、みたいな??」 青井(あおい)は冗談混じりに言葉にすると、浅黄(あさぎ)が声を上げる。 「お前は良いよなっ!何も無さそうでよ!!」 「いや、あるぞ?最近俺がライトを浴びても動かないヤツが増えて来てな……。」 「そう言えば、そんな事もあったな。」 俺が青井(あおい)の言葉に頷いていると、俺にスポットライトが当たっているのに、鉄の塊に乗った眉毛の無い若者がスピードを緩めずにそのまま通りすぎた。 「言ってるそばから、これかよ……。」 「あいつ!?危ねぇぞ!?」 俺が呆れていると、隣で浅黄(あさぎ)が声を上げる。 パッパーッ! 耳が壊れるかと思う音に驚きながらも、若者が乗っていた鉄の塊より大きい鉄の塊と若者はスレスレになりながらも、何事も無くすれ違った。 「心臓にわりぃ……。」 「何で俺達の方を見ないんだろうな?」 浅黄(あさぎ)は大きく息を吐き出し、青井は首を傾げていた。 「見て貰えなきゃ、俺達は何の為にいるんだろうな。……て、おいおい!!」 浅黄(あさぎ)はしんみりと青井の言葉に答えていたが、何かを発見したのか、言葉を荒げる。 「今、俺!!お・れっ!!俺がライトを浴びてるのっ!!見ろよ!?」 浅黄(あさぎ)の視線の先にいるのは、大学生くらいの女の子。 手に持っている小さな鉄の塊を見続け、そのまま歩いていた。 「俺を見ろよ!!あー!もう!何で見ないかな!?」 「あ、次は俺か。」 浅黄(あさぎ)の次に俺の番になった。 それでも見ない女の子。 キキーーーッ!! 鉄の塊からその音が鳴ると、道から煙が出てきた。 『危ねぇだろぅがっ!!』 『す、すいません!!』 何とか止まれた鉄の塊から人間が顔を出して、女の子に怒っていた。 「だから、俺を見ろっつったじゃん!!」 浅黄(あさぎ)も鉄の塊に乗った人間と同じように女の子に怒る。 「まー、俺達の声は向こうには届かないんだけどな。」 そう言う青井は少し哀しそうだった。 「見られ無いのに、俺達がここにいる意味ってあるのかな。」 そんな青井につられ、俺までしんみりとしてしまう。 「俺達がいなきゃ、ここは赤く染まるんぜ!?いるから、犠牲がないんだろ!!だから、俺を見ろー!!俺達を見ろー!!!」 浅黄(あさぎ)の言葉は、前半は俺達に向かい、後半は天を仰いで叫んでいた。 「お、あの子いい子じゃん。」 俺は今、浅黄(あさぎ)にライトが当たり、それを確認した黄色い帽子を被った男の子を指で示しながら浅黄(あさぎ)に言う。 「おお!ちゃんと止まってるじゃねぇか!!大きくなっても、そのままで いてくれー!!」 テンションが上がり過ぎた浅黄に苦笑を漏らしていると、俺の番になり、次に青井の番になった。 「ははっ。本当にいい子だな。」 青井は眩しそうに目を細めながら男の子を見守る。 男の子は青井(あおい)にライトが当たると、片方の手を精一杯(うえ)()げ、元気よく歩き出した。 その様子に俺達は顔を見合せて笑い合い、男の子を静かに見守った。 ────────── 外に出ると見掛ける「信号機」。 色々な形が最近はありますね。 地域によっても違うのでしょうか? 皆様の「信号機」はどんな「信号機」でしょう。 「信号機」のお話でした。 ──────────
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