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一
「なんだこの脚本は?」
ぼくと名乗る犯人が持つ、異常すぎる動機に、周到すぎる犯行計画、被害者の候補にリストアップされるのは、変わった名前の人間ばかり。
これから撮る映画の脚本とは訊いていたが、体裁はまるで小説の一人称のようで、脚本と呼ぶにはほど遠い。
そんな感想を抱きながら、この脚本は妙な説得力がある。それもこれも、邸桜大の元ミステリ愛好会の映画研究サークルメンバーにして、助監督の御堂耕一が書いた脚本だということに起因するのは間違いない。
ホラー映画とミステリ小説についてマニアックすぎる御堂のこと。ミステリ愛好会のメンバーと話が合わず、愛好会を抜けたのも納得がいくが、とんだ助監督の撮影に付き合うことなろうとは、犯人の役を演じる川石春海は苦笑を浮かべた。
「海外のホラー映画のキャラクターを合体させて作ったんだろう」
唯一、御堂耕一のマニアックな脚本についていけるものがいたようだ。
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