256人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「まぁその事なんだけどさ」
「?」
「ちょっとお願いが二つある。これで貸し借りなしってことで。…まず、しっかり口閉じて、」
「?…うん」
「あ、出来れば目も閉じて」
「え?え、はい…」
素直に目を閉じ、恐らく何をされるのか考えを巡らせているであろう彼の頬に俺はそっと両手を添え、顔を固定した。
何度も思うけど、やっぱりこいつ睫毛長いな。
垂れ下がってきた猫っ毛は邪魔だから少し退けて、透き通った肌を親指でするりと撫でた。艶々した唇はほんのり桜色で、本当に藤倉はお母さん似なんだなぁとしみじみ感じる。
「ちゃんと口閉じてる?」
「ん」
一応確認する。
そして、藤倉のお母さん、すいません。と心の中でひっそり先に謝っておいた。
「そんじゃあ…舌噛まねぇように歯ぁ食いしばれっ!!」
そうして俺は、ガッと思い切り上体を起こして藤倉の額に頭突きをかましたのだった。
「っ?!!いっっって!!!」
「ったぁ…。俺も痛ぇわコレ…」
自分でやったこととはいえ恐らく真っ赤になっているであろう額を気休めながらも撫で擦った。じんじんする。たんこぶできるかも。まぁこいつは喧嘩慣れしてるだろうからこんなん屁でも無いだろうけど、これは俺の自己満足。
っていうか俺に散々心配かけさせた罰だこの野郎。もっかいやってもいいくらいだけど、俺の頭の方が先にカチ割れそうだから一回で止めておこう。
「さわくんちょっと、いや結構頭固かったんですね…新発見…」
「るせぇこの変態っ!散々俺に心配かけさせやがって…また何か機会あったら仕返ししてやるかんな」
「えっ。楽しみにしてる」
「何でちょっと頬染めてんのっ?!マジで変態じゃねぇか」
「いったた…で?これが一つ目?」
「ん」
「じゃあ、もう一個は?」
「うん。あのさ、」
最初のコメントを投稿しよう!