05 その肖像は、アニリン・マジェンタで

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05 その肖像は、アニリン・マジェンタで

この世界には、絶対的な権力を有する王と、服従する民しかいない。 ……そう想っていたのは幻想だった。 この世界には、王すら掌で踊らせる影の支配者がいる。 この世界には、男達の(はかりごと)を理解した上で、弱きを演じる悪魔がいる。 この世界では、僕はただの神輿(みこし)なのだ。 真の権力もなければ、(まつりごと)や民を治める器すらない。 兄上、あなたはどうだったんですか? あなたが僕を知らなかったように、 僕もまたライヴァールやシャーロットを知らないのです。 僕は怖い。 この2人が恐ろしくてたまらない。 確かに、今の僕は、この国の王位に就く王子だ。 物言う口だって付いている。 だが僕の発言は、この先、真の歴史として残されることはないだろう。 相手がライヴァールとシャーロットなのだから。 揉み消し、捏造することは容易いだろう。 王族という名の凡庸な兄弟の証言など。
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