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04 シャーロットは問いかける
「あなた、誰なの? アニリンはどこに居るの?」
「何を言っているんだ、シャーロット? 俺が偽物だとでも?」
準備は万端だった。
見た目も声も、兄上と同じ。
口癖や趣味嗜好のマスターも、幼い頃から共に育ったライヴァールのお墨付きだ。
二十年来の付き合いを持つ側近の、だ。
政略結婚で嫁いだばかりのフランス王侯貴族の娘に何が分かる。
昨晩も、十年近く愛人関係を続けているヴェロニカに不審がられず、閨を共にしたんだ。
だが、シャーロットは美しい。
ヴェロニカとも、踊り子イザベラとも違い、気品がある。
言うなれば、持って生まれた王族の資質。
兄上に伝えられ、僕には継承されなかった『赤い色の何か』。
彼女の澄んだ碧い瞳に射抜かれると、余計に無力感に苛まれる。
苛まれた無力感は、文字通り、苛立ちに変わる。
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