05 その肖像は、アニリン・マジェンタで

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「殿下、どうなさいました? お飲みにならないのですか?」 シエナ派の影響を受けたゴシック様式のダイニングセットに、 僕とライヴァールとシャーロットは、腰かけていた。 天井裏から、俯瞰する者がいれば、さぞかし滑稽な三角地帯だろう。 僕が研究家なら、『マジェンタ・トライアングル』と後世に名を刻ませたかも知れない。 既に給仕が済み、湯気を上げるコピ・ルアクと数種類の焼き菓子がある。 目の前の黒い液体は、安全なのだろうか? 独特の匂いを放つコピ・ルアクは、 純白のベッキオホワイトに注がれている。 この硬質白磁は、バロック様式の流れを汲んでいる。 一件、ゴシックの(しつら)えには、合わないと感じる。
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