03 マジェンタ王国の赤子は、殊更赤い。

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03 マジェンタ王国の赤子は、殊更赤い。

現国王ファウスト・マジェンタが、ひっそりと息を引き取った。 僕は、ライヴァールからその報を受けた。 報を受けても、僕は実父の死に無感動だった。 まるで他人事の様だったし、魔窟では葬儀を行う風習すらなかった。 本当の父上であろうと、碌に顔すら見ていないのだ。 尊敬の念も、愛情の欠片も湧こうはずがない。 寧ろ、憎さが倍増されるだけだった。 同じ顔・同じ声の愚鈍な男はもうアニリンではない。 この訃報も知らないだろう。 計画は順調に運んでいる。 魔窟で知り合った、シルクロードの果ての民族。 王の死は、不毛な高山地帯で馬術を得意とする彼らが用いる『秘薬』の賜物であった。 徐々に体力を奪い、思考を薄め、緩やかな死へと至らしむ。 それでも、計画的に進めてきたのは、強い決意があったからだ。 マジェンタ王国を赤く照らす、あの月にも似た強い決意が。 04127df9-893d-4b69-a861-ee50fb7f7963
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