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「シュジンコ・アニリン・マジェンタ、私の質問に答えて」
室内に緊張が走る。
有無を言わせぬ、王者の風格を彼女は身に纏っていた。
「私の誕生日はいつかしら?」
「2月28日だ」
「私の好きな食べ物は何かしら?」
「牡蠣、それとムール貝」
「プロポーズの言葉を覚えてるかしら?」
「Vorrei la tua mano」
「……下さった花束は?」
「薔薇だ。君に良く似合った」
「薔薇の色は?」
「……赤」
「薔薇の本数は?」
「シャーロット妃、その辺にされたらいかがですか?
ロマンティックをお求めの処、申し訳ないが、本数など、我々が花屋に適当に頼んでいるのです。
この質問に最早、意味などありますまい」
微笑みを湛えたまま、業を煮やして、ライヴァールが割って入る。
だが、今やアニリンとなった俺が片手で制す。
「それでシャーロット、僕の答えに間違いはあったのかい?
本数は108本。そうだろう?」
「えぇ。確かに108本よ。数えてはいないけど」
そうだろう。
薔薇には本数ごとに、花言葉があるのだから。
108本は、結婚して下さいを意味する。
プロポーズならば、一択。簡単な答えだ。
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