01 アニリンの災難

1/3
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/19

01 アニリンの災難

俺は、酷い倦怠感の中、うっすらと双眸(そうぼう)を開いた。 ……どこだ? ベッドどころか敷物すらない無機質なタイルの上。 その上、手枷・足枷が()められている。 だが、一番の問題はネックレスがペンダントごと剥ぎ取られていることだ。 父上と亡き母上の写真が埋め込まれたロケットペンダント。 俺のアイデンティティそのものと言って良い。 何故ならあれは……。 見慣れぬ室内。一筋の明かり。 状況を把握しようと頭を動かすが、ジクン、ジクンと蟀谷(こめかみ)に脈打つ鈍痛が走るのみ。 これは、飲み過ぎた翌朝の感覚に似ている。 アルコールか、或いはドラッグの。 程なく吐き気が追いかけてくるだろう。
/19

最初のコメントを投稿しよう!