01 アニリンの災難

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確かに俺は我儘だ。 だが、マジェンタ王国の跡継ぎで、側近たちにはそれなりに甘い汁を吸わせてやっているつもりだ。 「なんなんだ! しかも、体のあちこちが痺れてやがる。 ……くそっ、誰だこんなことをした奴は。 俺が王子だということを知らないのか?」 姿の見えぬ相手。 俺は立ち上がり、独り芝居のように声を張るが、空しくも壁石に反響するのみ。 あぁ、分かっている……。 城内で薬を盛られたのだから、王子と知っての狼藉だ。 父上も病床に伏せている。大方クーデターでも起こされたのだろう。 と、その時――。 不意に人の気配に気づいた。 「ようやくお目覚めですか? アニリン・マジェンタ王子?」 重厚な石扉が開かれ、突然、松明(たいまつ)を手にした男が現れた。 「誰だ? 貴様は?」
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