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確かに俺は我儘だ。
だが、マジェンタ王国の跡継ぎで、側近たちにはそれなりに甘い汁を吸わせてやっているつもりだ。
「なんなんだ! しかも、体のあちこちが痺れてやがる。
……くそっ、誰だこんなことをした奴は。
俺が王子だということを知らないのか?」
姿の見えぬ相手。
俺は立ち上がり、独り芝居のように声を張るが、空しくも壁石に反響するのみ。
あぁ、分かっている……。
城内で薬を盛られたのだから、王子と知っての狼藉だ。
父上も病床に伏せている。大方クーデターでも起こされたのだろう。
と、その時――。
不意に人の気配に気づいた。
「ようやくお目覚めですか? アニリン・マジェンタ王子?」
重厚な石扉が開かれ、突然、松明を手にした男が現れた。
「誰だ? 貴様は?」
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