02 面影のレイワード

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僕はね、兄上、この日を待ち続けていたんですよ。 同じ父上の血を受け継いで……。 同じ母上の中で育ち……。 同じ日に生まれ……。 なのに現実はどうだ? 父上に愛されたのは兄上だけだ。 母上の乳で育てられたのも兄上だけだ。 同じ日に生まれた、同じ顔の子供だったのに。 兄上が帝王学を学び、王族たる英才教育を受けていた間、 一体僕は何をしていたと想う? 兄上が学友達と遊び、社交界の華達に囲まれていた日々に、 一体僕はどんな目に遭っていたと想う? 産まれ墜ちた瞬間に、全てを手にした兄上。 産まれ墜ちたが最後、全てを失う運命の僕。 僕の不幸は、あなたの幸運であり、 あなたの不幸は、僕の幸運なのだ。 だから、あなたはこれから、全てを失い、 反対に、僕はこれから、全てを手に入れる。 親友のライヴァ―ルも。 美しきシャーロットも。 僕が兄上と入れ替わろうと、誰も気づく者はいない。 同じ顔、同じ声。 王子の、王の職務など、執政官に任せておけばよい。 僕は、あなたがそうしてきたように我儘に振舞い、遊んで暮らすだけ。 あなたを殺しはしません。 言ったでしょう、兄上? 僕は『成り代わる』のではなく、『入れ替わる』のだと。 今日から、僕がアニリンで、あなたがレイワードだ。
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