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駅へと歩きながら昨日のことを思い出した
あの複雑な表情
口ごもった二年前の彼女の表情を思い出す
あの妖精が彼女自身だったとしたら
息を引き取り
妖精となった彼女は一番に僕のところへ来てくれた
何を願えばよかったのだろう
涙が頬を伝う
草原のなかで髪をなびかせて笑う彼女の姿がひどく懐かしかった
頭の中の笑う彼女が僕に呼びかけた
もう一度病院へ戻って
僕は門前払いを覚悟で涙をシャツで拭いながら走った
彼女は生きていた。
ベッドに横になり、こちらを見て笑っている
彼女の両親は病室にはいなかった
「わたしね、昨日不思議な夢を見たの、あなたに会う夢、あなたの体はわたしより何十倍も大きくて、たなわたしの声はあなたには聞こえなかったみたい。でもね、あなたは言ってくれたんだ、わたしにもう一度会いたいって」
「でも君は..」
「わたしはいちど死んでしまったみたい。でももしかするとあなたの願いがその現実をねじ曲がてわたしは今生きてるのかも」
僕の目からはまだ涙が溢れていた。
「君が好きだ」
僕は声を詰まらせながら懇願するように言って手を膝についた
彼女は優しく微笑み「わたしもあなたと同じ気持ちだよ。わたしはもう両親の思い通りにはならない。あれからあなたは一度も電話してこなかったけど、わたしの番号は変わっていないから、またちょこちょこ連絡してね。もう大丈夫、退院したらまたあのレストランへ連れて行って」と首を傾けた。
「もちろん」
僕は夢でも見ているような気分だった。
食べ物を買いに行っていた両親が戻って来たので僕はすぐに病室をでて、外から中をのぞくと、彼女は僕にウインクをしてにっこり笑った。
一度失ってしまったものにもう一度出会えるのは言葉にできないくらい不思議で幸せな気持ちがするものだ。
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