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彼女の面影
金狐は桜と過ごしたあの場所にいた。
慰みに口ずさむのは、桜が好きだと言って良く歌っていた歌。
思えば何の歌なのかも、きちんとしたメロディも歌詞もわからぬうろ覚えだ。
まるで頼りない歌声。
でも確かにここに桜がいたという証。
成長を見守っていたのはこちらだというのに、その歌を歌っているとまるで、桜の優しさに包まれているような気さえした。
純真無垢でお人好しな程に優しい少女だった。
こちらが追い払おうとしても、引っ付いてくるような頑固さもあった。
ちょっとキツく言うと泣いて勝とうとするような所もあった。
それですらなんだか微笑ましくなっていって···
「あぁ、そうだな···」
嫌いだ嫌いだと言って本当は···
「俺はヒトが好きだったんだ」
それを、あの子の真っ直ぐな愛が思い出させてくれたのだ。
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