1人が本棚に入れています
本棚に追加
ゴミ捨て場の裏、朽ちかけた木のベンチ。無秩序に茂る紫陽花の苗木に囲まれたこの空間は、墓場みたいに静かだ。腐った落ち葉を払い、ベンチに座る。制服のブレザーは灰色で、私は墓石にでもなった気分になる。
重苦しい夏の桜の濃緑を透かして、校舎が見える。数十の窓があり、それぞれに異なる教室が、風景が映っている。銀河団みたいだ。私はさしずめ、外野の彗星か。いや、そんな格好良いもんでもないか。
弁当を開ける。ご飯、塩鮭、玉子焼き、ひじき。豪華ではないが別に貧相でもない、普通の弁当。色彩に乏しいが、だからといって不満なわけでもない。塩鮭を口に含む。しょっぱい。
――にゃぁ――
紫陽花の木立から、猫がのそりと現れた。汚い猫だ。色は薄茶――といっても汚れているだけで、元は白かも知れない――毛はところどころ抜け落ち、耳は欠け目は濁っている。左脚を引きずりながら、必死に愛嬌を振り向き、餌をねだる。私は動物に懐かれない方だ。この私にねだるなんて、余程お腹が空いているのだろう。猫はあまり好きではない。だがここで無下に追い払っても化け猫か猫又か何かになって祟られそうだ。仕方ない、鮭を……いや、あんまり塩分高いのはだめだっけ。
最初のコメントを投稿しよう!